久しぶりに青黒くなってみました

新本格ミステリをきっかけとする昨今の本格ミステリブームは、厳密に言えば「広義の本格ミステリ」ブームだったわけです。なにせ鼻を切った『十角館の殺人からして、どう見ても「広義」の範疇に入る作品なのですから。「狭義の本格ミステリ」はその恩恵を受け、端の方でちょこちょこと出版させて頂いていた身のはず。中には『双頭の悪魔』のような傑作もありましたが、ブームの火を繋ぎ続けたのは、叙述トリック、メタミステリと、京極、森、メフィスト系、ラノベ系といった「広義」な作家達だったのです。


その歴史を今更「狭義」を中心に据えて語る(振り返る)ことは無理でしょう。評論家からすれば、「血筋」以外に見るべき所のほとんど無い、時々オマケのように出版されては、一部の信者のみにありがたられてる「前時代の末裔」に熱い視線を送るはずもなく、ブームの中心であった「広義」の流れを注視し、川底から周辺まであさりつくし、評論を組み上げて行こうとするのが当然だと思います。そして、現代本格ミステリの流暢は「広義」にあり、と旗を振るのもなんら普通のことでしょう。


もう「狭義」は現代本格ミステリの源流の一つでしかないのです。そして「本格ミステリ」も「ミステリー」の本流ではなく、支流の一つでしかありません。


結局、本格村内の選挙において、表面的には皆が「狭義」をありがたがってくれたり、持ち上げてくれてたりしたのは「血筋」のおかげだったと。表立っての活動には「肩書」が便利だからと。


これからまた引き潮の時代を迎えそうですが、「血統」を絶やさないよう、頑張って下さい。