たまには書かないと

 おひさしぶりです。夏の間は長野と東京を行ったり来たり、しかも諸事がぽろぽろ舞い込んできて大忙しでした。今月に入ってからも、勤め先の学校の学園祭で、教職員の作品展示をやりたいので油絵を出品して欲しいと言われたので、7月の展覧会に出した絵に少々手を入れて出そうとしていたら、あっという間に泥沼にはまって大改作となってしまい、息も絶え絶えの状態です。ま、なんとか引き渡しましたが。

 読書の方はウンベルト・エーコ祭り。『フーコーの振り子』と『薔薇の名前』を読了。なんというか、知の大博覧会に手ぶらで迷い込んだような感覚でした。多分、書かれていた文章のほんの一部しか飲み込めていないと思うのですが、それでも物凄く面白かったです。『薔薇の名前』の世界(中世ヨーロッパ)にはとても興味が湧きましたし、様々な刺激を受けた読書経験でした。

 近所のブックオフで、文庫本オール100円セールが開かれていたので、海外作品を10冊程購入。今年中は国産ミステリを手にしないことが確定しました。まだ実家にも大量の海外作品があるんだよなぁ。

 抜け殻に血を注げ

 なんとか展覧会に間に合わせました。あー、今回は久しぶりに極限までやばかったです。一日十時間以上も絵に向き合ったのは、5、6年ぶりくらいかな。初めて展覧会が二つ重なったのですが、こんなにきついとは……。

 御来場くださいましたMAQさま、ありがとうございました。最近のミステリサイトに関して、案外私と似たような感想をお持ちだったことに、正直ほっとしております。私自身、以前のような活動は無理ゆえ、この流れは今後も加速していくと思っております。まあ、そのうち「私がミステリサイトを閲覧しなくなった10の理由」なんて形で、ウジウジと書いていくかもしれませんが。

 『フーコーの振り子』は上巻を読了。南海もとい、難解を通り越してます。でも、面白い。

 そして阿鼻叫喚のアトリエへ

 もうすぐ展覧会です。一応日程を。

第5回 蒼天画展
場所 練馬区立美術館(西武線中村橋駅より徒歩3分)
会期 7月18日(月)〜24日(日)
     ただし、19日(火曜日)は休館日です
開場時間 10時〜18時
     (初日13時より、最終日16時まで)

 私は月曜、金曜、土曜(16時まで)、日曜に会場にいます。入場料とか取られないんで、お気軽にどぞ。


 今年は海外ミステリを徹底して読むつもりゆえ、政宗さんとこの企画はパスさせていただきます。国産の新刊を買う余裕がないんで、古本屋の100円文庫ばかり拾っているのですが、なんかこっちの方が面白い作品に出会える率が高いような。今のところハズレは一冊もなかったです。

 甘い紅茶に首ったけ

 最近、JR中央東線でのEF64機関車の重連運用が減り始めているのが悲しいです。徐々に最新鋭機のEH200に置き換わっていたのは知っていましたが、このところ明らかに勢力が逆転していることに気付きました。甲府駅では乗務員の交代のために、マンモス機EH200が下りホームから出発する風景を何度も間近で目にしましたが、もの凄い音と風圧をまき散らすその勇姿は何度みても迫力満点です。

 そういえば、八高線から103系が引退しました。以前の勤めの時は毎日のように乗っていただけに、東京都内唯一のローカル線の名物、あのうぐいす色の電車が見られなくなったのは寂しいかぎりです。

 少し前ですが、テレビ番組で小淵沢駅ホームの立ち食いそば屋さんが紹介されていました。中央東線内ではあそこが一押しの私は、飛び上がって喜んでしまいました。やっぱあそこは美味しいよ。

トマス・ハリスレッドドラゴン』読了。

 猟奇サスペンスものの秀作だと思います。小説内で起こる事件自体は、幸せな家族が殺されていくなど、あまり気持の良いものでは無かったのですが、繊細かつ大胆に犯人を追い詰めていく過程が面白すぎて、ガッツリと読みふけってしまいました。犯人の生い立ちの部分(理由付けみたいなものですね)はちょっと読むのがつらかったですが、それ以外は文句無しです。

トマス・ペリー『逃げる殺し屋』読了。

 殺し屋が主人公といえば『ジャッカルの日』を思い起こす私ですが、この作品に出てくる殺し屋もかなりの凄腕、そして魅力的です。そんな凄腕が、一つのボタンのかけ違いから組織に追われる訳ですが、ただ逃げるだけでは無く、大胆な反撃や報復に出ていく所が見物。ちらっと出てくる同業者っぽい人達もアクセントになって、最初から最後まで緩み無く物語が転がっていきます。傑作です。

 さぁて、『フーコーの振り子』に手を出しましたよ。面白いっていう噂はたくさん聞いたけど、どんな物語なんだろう。

 久しぶりにアップ

 仕事の関係でibookG4を触っております。初めてのOS10を手探りでいじっているゆえ、亀のような歩みで作業中です。なんか、機械が熱くなってきました。大丈夫なのかな。

 学校の仕事と、お絵描きの方の仕事の忙しさが、ピークを目指して抜きつ抜かれつのデットヒートを演じております。初日までに胃に何個穴が開くやら。

 最近はミステリを少し離れて、『諏訪大社御柱の謎』(守屋隆著、諏訪文化社)という本にのめり込んでおりました。何が面白いって、歴史の闇の向こう側にある諏訪大社にまつわる数々の謎を、『QED』シリーズさながら、「仮説に仮説を重ねた理論」でぶった切っていく、歴史ミステリ独特の「奇妙な快感と猥雑感」に満ちあふれているからです。これはソッチ系が大好きなミステリ読みには垂涎の一冊ですよ、ホント。諏訪大社にはなぜ「上社前宮」「上社本宮」「下社秋宮」「下社春宮」の4社があるのかや、寅と申の年に行われる「御柱祭」の謎や、鹿の頭などの供物が大量に捧げられる「御頭祭」の謎や、冬眠中の蛙を捕まえ文字通り八つ裂きにする「蛙狩神事」の謎などが、作者の豪腕(陰陽学、陰陽五行学、風水学、現地での綿密な資料収集、日本神話の解釈、「太陽の道」論etc)で次々と正体を暴かれていきます。この熱量、半端じゃないです。どれだけ出回っている本かは解りませんが、『QED』シリーズが好きな人ならまず間違いなくハマれますよ。

 そうだ、ソッチ系の大物である、梅原氏の本を買ったまま未読だった。実家に取りに行こっと。

E・D・ホック『怪盗ニック登場』読了。一見意味のないものしか盗まない怪盗が主人公の、ちょっと変わったミステリ短編集。

 現在は『レッドドラゴン』を読書中。こりゃ売れるわぁ、って感じで読み進めてます。

 最近の読書記録

 最近読んだ本。

『コフィン・ダンサー』 ジェフリー・ディーヴァ−
 前作「ボーンコレクター」で活躍した捜査チームが再登場。ゆえに、主人公を取り巻く人間ドラマ的な展開は今回は押さえぎみで、最初からチーム一丸となって、凄腕の殺し屋と追い掛けっこ。これが裏の読み合でとってもスリリング。最後には意表をついた仕掛けも炸裂して、大満足の一冊でした。


『愚か者死すべし』 原りょう
 ついに来ました、新シリーズ。国産ハードボイルドでは最も肌にあうシリーズゆえ、非常に期待して読み進めたのですが、期待通りの面白さ。初期のような「これは凄いぞ」というインパクトは薄かったですが、きめ細かい描写や言葉選び、作品を覆う空気感など、どれもが高水準でゆるみがありません。すでに次の作品にも期待しちゃってます。


『悪党どものお楽しみ』 パーシヴァル・ワイルド
 ギャンブル小説が大好きな私が「これだ!」と叫べる久しぶりの良作。元凄腕ギャンブラーの主人公が、トラブルに巻き込まれまくるワトソン役の相談に乗り、様々なタイプの「いかさま事件」を解決して行く短編集。ギャンブルものの鉄則である、相手のいかさま技を見破るだけで無く、その裏をかいて勝利する、という展開が読んでいて気持良かったです。


『歯と爪』 バリンジャー
 結末の意外性で有名な作品ですが、たまたま私の場合、前半思い描いた推理が大正解してしまい、驚き自体は大きくありませんでした。が、作者の手腕には上手いなぁと感心。良く出来たミステリです。


『誘拐』 ビル・プロンジーニ
 系統でいうとネオ・ハードボイルド系列の代表作、「名無しのオプ」シリーズの第1作とのこと。作者の事もシリーズの事もほとんど知らず、「久しぶりに誘拐ものでも読んでみようかな」と軽い気持で読み始めたのですが、これがびっくり、ストーリーの展開の早さとリーダビリティーの高さ、登場人物の魅力に吸い込まれ、むさぼるように読み進めてしまいました。題名通り、私立探偵ハードボイルド小説の王道である誘拐事件を正面から題材にしていますが、作者に筆力があり位負けしていません。ミステリ的要素も上手く折り込まれており、とても満足度の高い一冊でした。


『悪党パーカー/人狩りリチャード・スターク
 こんなに凄いシリーズを、今の今まで読み逃していた事が腹立たしくなるくらい面白かったです。悪漢小説の傑作シリーズと聞いてはいましたが、これほど心踊るような作品だったとは。まったくもって、海外ミステリをおろそかにしていたことが恥ずかしいです。


 海外には「まだ見ぬ強豪」がわんさかとひしめき合っているようです。

 海外ミステリ、読んでます。

 長野と東京を行ったり来たりの生活。東京にいるときは、知人の展示会や、お世話になった先生の展覧会や、国風盆栽展とかを見に都会へ。絵を描く時間が……。


 『ボーン・コレクタージェフリー・ディーヴァー文藝春秋
 探偵役を含む、登場人物の描き方がとんでもなく上手いです。ストーリーの核になる猟奇事件もなかなか魅力的だし、探偵役の道具となる最新の鑑識技術もスパイスとして効いてます。サスペンスもバッチリ。これは文句無しに傑作。


 『捕虜収容所の死』マイケル・ギルバート(創元推理文庫
 謎解きミステリとしては若干不満もありますが、面白い小説でした。謎だった部分が解明されて行くくだりはかなり感心しました。ただ、第二次世界大戦時の捕虜収容所の組織構造がどんなものなのか全く知らなかったゆえ、最初のうちは戸惑いも多く、もう少し説明があったらなと。


 現在は『コフィン・ダンサー』を読書中。